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部活動の地域展開の進め方|ガイドライン準拠の実務4ステップ

  • 自治体
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本記事では、スポーツ庁の運営ガイドブックをもとに、部活動の地域展開(地域移行)の実務の全体像と、自治体が取り組むべきポイントをわかりやすく解説します。

【本記事における名称について】文部科学省のガイドラインに基づく正式名称「地域展開」を基本として使用します。ただし、現場での認知度を考慮し、「地域展開(地域移行)」と旧称を併記します。

SECTION 01部活動の地域展開(地域移行)とは?最新の背景と目的を再確認

部活動の地域展開(地域移行)とは、これまで学校単位で行われてきた部活動を、地域クラブ活動などに広げていく取り組みのことです。

文部科学省が令和7年12月に策定した「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」では、この改革の意義が明確に示されています。

改革の目的は子供たちの活動の充実

この改革の目的は、教員の負担軽減にとどまりません。「子供たちの豊かで幅広いスポーツ・文化芸術活動の機会を保障すること」に主眼が置かれています。

少子化の影響で学校単位の部活動維持が困難になる中、地域全体で子供たちを支える仕組み、つまり考え方の大きな転換(パラダイムシフト)が求められているのです。

部活動の地域展開(地域移行)について初めて情報収集される方は、まず制度の全体像や改革スケジュールを整理した以下の記事もあわせてご覧ください。

教員の働き方改革と令和11年度までの目標

教員の働き方改革と令和11年度までの目標

給特法改正法の附則では、令和11年度を目途として、教育職員の時間外在校等時間の縮減(月平均の上限の目安として30時間程度)を目指す方針が示されています。

一方、部活動の地域展開については、国のガイドラインにおいて令和13年度末を目途とした段階的な移行が示されており、両者は別の目標として整理する必要があります。

項目教員の時間外勤務削減目標部活動地域展開の移行目標
根拠法令・文書給特法改正法(附則)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月)
所管文部科学省文部科学省・スポーツ庁・文化庁
目標年度令和11年度を目途令和13年度末を目途
目標の性質法令附則に基づく努力目標ガイドラインに基づく行政目標
対象公立学校の教育職員公立中学校等
達成の指標時間外在校等時間の月平均30時間程度への削減休日の部活動における地域クラブ活動への移行完了
直接の担い手各学校・教育委員会の勤務管理自治体・教育委員会・地域団体の協働

地域展開(地域移行)の定義

実務を進める上で、言葉の定義を正しく理解しておくことが重要です。

地域展開(旧称:地域移行)とは、生徒のスポーツ・文化芸術活動を学校部活動から地域クラブ活動に展開すること。学校と地域を二項対立で捉えず、地域全体で支えることで新たな価値を創出するという理念を的確に表すため、従来の「地域移行」から名称が変更されました。

自治体は、最終的に地域展開(地域移行)を目指しながら、各地域の状況に合わせてこれらを組み合わせていく役割を担います。

制度の概要や令和8年度から始まった改革実行期間について詳しく知りたい方は、最新状況をまとめた以下の記事も参考になります。

SECTION 02運営ガイドブックが示す地域展開(地域移行)の4ステップ

図解:地域展開の4ステップ(方針→準備→実行→検証)

スポーツ庁の運営ガイドブックでは、地域展開(地域移行)のプロセスを4つのステップに整理しています。各フェーズで自治体担当者が具体的に何をすべきかを、実務レベルのタスクに落とし込んで解説します。

【STEP 1:方針】取組の大きな方向性の検討

ゴール:庁内の関係部署と地域団体の間で「何を・いつまでに目指すか」の合意を得る。

まずは、地域全体でどのような活動を目指すのか、土台となるビジョンを策定する段階です。

  • 推進体制(協議会等)の設置:教育委員会、スポーツ振興部局、学校関係者、地域スポーツ団体(スポーツ協会等)で構成される地域クラブ活動協議会を立ち上げます。ここで関係者の合意形成を図ることが、後のトラブル防止に繋がります。
  • ニーズ調査の実施:生徒、保護者、教員を対象にアンケートを行います。「地域に移行しても続けたい種目」「保護者が負担できる月謝の範囲」「教員の兼職希望の有無」など、客観的なデータを収集しましょう。
  • 地域展開(地域移行)のロードマップ策定:「令和13年度末を目途に、休日の部活動について地域クラブ活動への移行を完了させる」といった、具体的かつ段階的なスケジュールを議会や住民に提示します。

実際に改革を進める自治体では、どのような体制を構築しているのでしょうか。規模別の先行事例は以下の記事で紹介しています。

【STEP 2:準備】具体的な取組内容や計画策定

ゴール:「誰が・どこで・どう運営するか」を具体化し、実行可能な計画に落とし込む。

方針が決まったら、実際に「誰が」「どこで」運営するのかという詳細を詰めます。

  • 運営主体の選定:総合型地域スポーツクラブ、民間事業者、NPO法人、または自治体直営など、持続可能な母体を決定します。
  • 指導者の確保:既存の部活動指導員に加え、地域の有資格者や大学生、兼職希望の教員をリストアップし、研修を実施します。
  • 活動場所・移動:学校施設の開放ルールを再整備し、必要に応じて拠点校への移動手段(スクールバスの活用等)を検討します。
  • 安全管理基準:事故発生時の緊急連絡体制や、気象条件による中止判断基準をまとめた「安全管理マニュアル」を作成します。

認定制度の具体的な要件や、委託先を選定する際の確認ポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

【STEP 3:実行】地域クラブ活動の開始と運営

ゴール:会員・財源・安全体制を整え、持続的に回る運営をスタートさせる。

この段階で、実際の活動を開始します。この段階では持続可能な仕組みを回す実務が中心となります。

  • 会員募集と参加費(受益者負担)の徴収:クラブの会費設定を行い、入会手続きを進めます。会費は、指導者謝礼や保険料、用具費を賄える水準で設定することが基本です。ただし、低所得世帯への減免措置をセットで検討することが不可欠です。先行事例では月額数千円程度に設定するケースが見られますが、自治体の財政判断により公費負担の割合を高める選択肢もあります。
  • 学校との情報共有フローの確立:生徒の学校での様子や欠席連絡を学校と地域クラブ間でどう共有するか、ルールを定めます。ここで重要になるのが、学校と地域の橋渡し役となるコーディネーターの配置です。
  • スポーツ安全保険への加入:万が一の事故に備え、参加者全員の保険加入を徹底します。

地域クラブを実際に立ち上げる場合の法人設立や収支設計、指導者確保については以下の記事をご覧ください。

【STEP 4:検証・改善】振り返りと発展的な推進

ゴール:参加者の声をもとに運営を見直し、次年度につながる改善サイクルを定着させる。

活動開始後は、定期的に内容をブラッシュアップし、PDCAサイクルを回します。

  • 効果測定とフィードバック:活動に参加している生徒や保護者、指導者への満足度調査を定期的に行います。満足度調査においては、子供たちが主体的に活動できているかという観点を評価項目として設定することが重要です。
  • 運営体制の見直し:フィードバックを次年度の指導者配置・種目構成・受益者負担額の見直しに反映させます。
  • 認定地域クラブ活動制度の活用検討:国の認定制度を活用し、クラブの質と信頼性を担保するステップへと進みます。

実務に入る前に、先行自治体でどのような失敗が起こっているのかを把握しておくことで、計画段階からリスクを避けやすくなります。以下の記事もあわせてご確認ください。

SECTION 03自治体担当者が知っておくべき「認定地域クラブ活動制度」のポイント

令和8年度から本格的に運用が開始されている「認定地域クラブ活動制度」は、自治体が地域クラブの質を担保し、保護者が安心して子供を預けられる環境を作るための重要な仕組みです。

認定制度の概要と目的

この制度は、スポーツ庁・文化庁が示す一定の基準を満たした地域クラブ活動を、自治体(またはその指定を受けた団体)が認定するものです。その主な目的は、クラブの運営の透明性を高め、安全・安心な活動環境を公的に保障することにあります。

認定を受けることで得られる3つのメリット

認定を受けたクラブ、およびそれを推進する自治体には、以下のような実務上のメリットが期待されます。

  • 公的な信頼性と安全性の担保:国のガイドラインに準拠していることを公的に示せるため、移行を不安視する保護者や学校への説明において、客観的な根拠の一つとして活用できます。
  • 公的支援の受けやすさ:認定を受けたクラブを対象とした補助金の優先配分や、学校施設の利用調整における配慮など、行政からの支援措置を設ける際の制度的根拠として活用することが考えられます。補助金等の審査において認定の有無が考慮される場合もあるため、各支援制度の要件を確認したうえで、認定取得の意義を検討することが望まれます。
  • 指導者の質と組織運営(ガバナンス)の向上:認定要件には、適切な指導員の配置やハラスメント防止対策が含まれます。制度の導入自体が、地域のスポーツ・文化団体の組織運営を適正化させるための、強い動機付け(インセンティブ)として機能します。

認定の主な要件(チェックポイント)

国のガイドラインが定める7つの認定要件は以下の通りです。

  • 学校部活動が担ってきた教育的意義を継承・発展させた活動であること
  • 適切な活動時間や休養日が設定されていること
  • 活動の維持・運営に必要な範囲で、可能な限り低廉な参加費等が設定されていること
  • 適切な指導の実施体制が確保されていること(不適切行為の防止徹底など)
  • 適切な安全確保の体制が確保されていること
  • 適切な運営体制が確保されていること(非営利運営、規約の公表など)
  • 学校等との連携が適切に行われていること

認定要件のより詳しい内容や、自治体が審査時に確認すべき実務上のチェックポイントについては、以下の記事で解説しています。

SECTION 04持続可能な運営のための予算・財源の考え方

自治体担当者にとって懸念事項の一つが、活動を継続するための財源です。

国は「最終とりまとめ」において、改革実行期間(令和8年度〜令和13年度)における費用負担の在り方を示しています。

初期段階は国の補助金を積極的に活用しつつ、中長期的には自立的な収支モデルの構築を見据えた財源の多角化を検討することが重要です。

財源確保の全体像、補助金や補助金以外の財源確保の自治体先行事例については、以下の記事をご覧ください。

SECTION 05先行自治体の事例:推進体制とコーディネーターの役割

部活動の地域展開(地域移行)をスムーズに進めるためには、自治体内部の体制整備と、学校・地域を繋ぐ人の配置が鍵となります。スポーツ庁の事例集から、先進的な取り組みを行う2つの自治体を紹介します。

岐阜県:多層的なコーディネーター配置による伴走支援

岐阜県では、県全体で足並みを揃えて改革を推進するため、専門部署の設置と多層的なコーディネーターの配置を行っています。

  • 専門部署「部活動改革係」の設置:令和4年度に教育委員会内に専属の係を設置しました。現在は4人体制で市町村への支援方策の立案やガイドラインの策定、指導者研修などを一手に担っています。
  • 多層的なコーディネーター体制:県全体を統括する総括コーディネーター1名に加え、県内6地区に推進コーディネーターを配置しています。地区のコーディネーターには、学校現場に精通した退職教員を起用しました。これにより、地域の実情に応じたきめ細やかな伴走支援を実現しています。
  • 定例会議による情報共有:市町村の担当者が参加する「地域クラブ活動推進会議」を年4回開催しています。県内外の優良事例や進捗状況を共有することで、自治体間の格差を埋める工夫をしています。

この結果、令和6年度末時点で県内の運動部活動の約72.5%(1,036部)が地域クラブ活動への移行を完了させるという成果を上げています(県内の運動部活動全1,429部のうち)。

新潟県長岡市:部局横断の専門部署「部活動地域移行室」の設置

新潟県長岡市は、行政組織の垣根を越えた強力な推進体制を構築している事例です。

  • 「部活動地域移行室」による一元化:学校教育課内に専門部署を設置しました。特徴は、スタッフが教育委員会部局と市長部局(スポーツ振興課等)を「併任(二つの部署の仕事を兼ねること)」している点です。これにより、意思決定の迅速化が図られています。
  • 四者協定による運営体制の整備:市、教育委員会、スポーツ協会、芸術文化振興財団の四者で連携協定を締結しました。スポーツだけでなく文化芸術分野も含めた、網羅的な資源(人・モノ・場所などのリソース)の整理・提供を可能にしています。
  • 週1回の定例ミーティング:関係部署や団体が集まる定例会議を毎週開催し、課題を即座に議論・修正・共有する仕組みを構築しています。

長岡市は、学校教育課内に「部活動地域移行室」を設置して推進体制を一元化し、令和7年9月に休日の部活動を完全に地域展開して新たな地域クラブ活動「ながおかCome100クラブ活動」を開始しています。

他の成功自治体の事例も比較したい方は、以下の記事をご確認ください。

SECTION 06まとめ:「いつ・何を」を整理して動き出す

部活動の地域展開(地域移行)は、対話と共創を通じて地域全体で子供たちの活動を支える仕組みを築くプロセスです。完成形を一度に目指すのではなく、時間軸で区切って着手しましょう。

  • まず1〜2か月以内に:庁内の関係部署で勉強会を開き、本記事の4ステップを共通認識にする。
  • 次の四半期で:協議会の設置とニーズ調査に着手し、移行ロードマップの素案を作る。
  • 年度内を目安に:運営主体・指導者・財源の候補を洗い出し、議会・保護者説明の論点を固める。

各地域の特性に合わせて試行錯誤を繰り返すことが前提です。まずは小さく動き出し、改善を重ねてください。

SECTION 07よくある質問(FAQ)

部活動の地域展開(地域移行)は何から着手すればよいですか?

まず庁内の関係部署で改革の目的を共有し、方針(STEP1)を固めることから始めます。次に協議会の設置とニーズ調査を行い、運営主体・指導者・財源の候補を洗い出して準備(STEP2)を進めます。

認定地域クラブ活動制度を受けるメリットは何ですか?

一定の要件を満たすクラブとして自治体の認定を受けることで、活動の質と安全性を対外的に示せます。保護者の安心につながり、補助金など公的支援の活用や広報面でも有利になります。

活動費用(会費)は誰がどのように負担しますか?

受益者負担(会費)を基本としつつ、補助金などの公的支援を組み合わせて設計します。経済的に困難な家庭には減免措置を用意し、負担の透明性を確保することが重要です。

参考資料・出典
  1. 部活動の地域展開における地域クラブ活動の創設・運営ガイドブック(スポーツ庁, 2026.03
  2. 部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(スポーツ庁, 2025.12
  3. 「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」最終とりまとめ(文部科学省
  4. 事例集(スポーツ庁

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