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持続可能な地域クラブの作り方|設立から収益化、指導者確保まで

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本記事では、部活動の地域展開(地域移行)の受け皿となる地域クラブの設立方法や、持続可能な運営のポイント、自治体との連携方法をわかりやすく解説します。

【本記事における名称について】文部科学省のガイドラインに基づく正式名称「地域展開」を基本として使用します。ただし、現場での認知度を考慮し、「地域展開(地域移行)」と旧称を併記します。

地域クラブ設立を検討する前に、部活動の地域展開(地域移行)の制度全体や国の方針を整理したい方は、まず以下の記事をご覧ください。

SECTION 01地域クラブ設立が求められる背景

図解:地域クラブが受け皿として求められる背景

現在、国が推進する大きな変革として、学校の部活動を地域へ引き継ぐ「地域展開(地域移行)」が本格化しています。文部科学省のガイドラインが掲げるのは、子どもたちが持続可能で質の高い活動に親しめる環境の構築です。

背景には、深刻な少子化にともなう部活動の維持困難と、教員の働き方改革という切実な課題があります。従来の学校単位の運用では、指導できる教員の不足や、生徒数が足りずにチームが組めない問題が様々な地域で顕在化してきました。

そこで、専門的な指導ノウハウを持つ民間事業者や総合型地域スポーツクラブが、新たな受け皿として強く期待されているのです。民間事業者が参入することは、指導の専門性と安定した運営基盤をもたらし、地域全体のスポーツインフラを支える重要な一歩といえます。

国が従来の「地域移行」という言葉を「地域展開」へと改めた真意は、まさにこの点にあります。単に活動の場を学校から外部へ横スライドさせるのではなく、学校の人的・物的資源を広く地域に開き、地域全体で支え合うことで、従来の部活動にはなかった「新たな価値」や多様な体験機会を創出することが本質のビジョンです。

令和8年度から始まった改革実行期間では、休日における地域クラブ活動への移行を基本としつつ、地域の実情に応じた柔軟な対応も認めながら、平日を含めた包括的改革の推進が求められています。

改革実行期間の最新状況や、全国の自治体における普及状況については、以下の記事で詳しく紹介しています。

SECTION 02地域クラブの作り方|5ステップ

地域クラブを立ち上げ、安定して運営していくためには、事前の綿密な準備が不可欠です。ここでは、具体的な設立手順を5つのステップに分けて解説します。

1. 運営主体の決定

最初のステップは、クラブの母体となる運営主体(法人格)を決めることです。選択肢としては、一般社団法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、民間企業、任意団体などが挙げられます。

この中で特に検討をおすすめしたいのが、非営利型の一般社団法人です。主な理由は以下の3点です。

  • 設立に際して所轄庁の認証が不要なため、NPO法人と比較して設立までの期間が短い傾向にある。
  • 非営利性が明示されることで、自治体からの業務委託や補助金の対象となりやすい傾向にある。
  • スポーツ庁の調査によると、実証事業における運営主体は行政部局の直轄や体育・スポーツ協会、総合型地域スポーツクラブなどが多く、地域の既存資源を活かした形態が主流となっている。

なお、既存の民間企業や総合型地域スポーツクラブとして参入する場合は、現在の法人格のまま認定要件を満たすことも可能です。貴団体の状況に応じて、最適な形態を選択してください。

2. 認定制度への対応

次に、部活動の地域展開(地域移行)にともない、国が示す要件に基づき市区町村等が実施する「地域クラブ活動に関する認定制度」への対応を進めます。この認定制度は、子どもたちが安全に活動できる環境を担保するために設けられた仕組みです。

認定を受けるための要件は、スポーツ庁・文化庁の方針を踏まえつつ、実際の基準や運用は自治体・競技団体ごとに定められます。一般には、適切な安全管理体制や指導者の資格保有などが求められます。

認定を取得すると、自治体による生徒・保護者への情報提供や、学校施設等の優先利用・使用料減免といった公的支援を受けやすくなります。支援の内容や範囲は自治体ごとに異なるため、申請先での確認が必要です。

なお、スポーツ保険(傷害保険・個人賠償責任保険等)への加入は、多くの自治体・競技団体で認定の要件または前提とされています。求められる保険の種類や補償範囲は実施主体によって異なるため、申請先の要件を確認のうえ、あらかじめ加入手続きを進めておくことをおすすめします。

認定制度への対応は、以下のように整理しておくと協議がスムーズになります。なお、具体的な要件・支援内容は申請先の自治体によって異なるため、下記は一般的な例としてご確認ください。

認定で一般に求められる主な要件(例)

  • スポーツ保険(傷害保険・個人賠償責任保険)への加入
  • 適切な安全管理体制の整備
  • 指導者の資格保有(各競技団体が定める基準に準拠)
  • 活動内容・運営体制に関する情報開示

認定取得後に期待できる主な支援(例)

  • 自治体(教育委員会)から生徒・保護者への公式な情報提供・周知
  • 学校施設の優先利用および使用料減免
  • 自治体の補助金・委託費の対象となりやすくなる

本格的な運用に向けて、まずは地域の教育委員会や自治体の担当窓口と緊密な協議を重ねてください。

認定制度を満たしていても、委託先として選ばれるためには、安全管理や運営体制も重要になります。選定基準についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

3. 収益モデルの設計

3つ目のステップは、赤字を出さないための持続可能な収益モデルを設計することです。地域クラブの運営費は、保護者が支払う会費(受益者負担)と、自治体からの補助金・委託費の組み合わせが基本となります。

このとき最初に直面するのが「いくらに設定するか」という問題です。周辺クラブの金額を参考に「なんとなく月2,000円」と決めてしまうと、運営が軌道に乗った後で値上げを迫られ、保護者の不信を招きかねません。

会費は相場から逆算するのではなく、必要経費を積み上げ、会員数で割るという手順で決めるのが原則です。

会費の積算構造

会費の原資となる費目は、大きく次の4つに分解できます。

費目主な内訳積算のポイント
① 指導謝金指導者への報酬、交通費最大の変動費。時間単価×活動時間×人数×回数で算出。認定要件上、原則複数配置が求められる点を織り込む
② 保険料傷害保険、個人賠償責任保険、法人向け賠償責任保険生徒分・指導者分・法人分を分けて計上。年額を12で割り月割りする
③ 施設費学校施設・公共施設の使用料、光熱水費相当認定クラブは減免・優先利用の対象となる場合が多い。減免の可否で金額が大きく変わるため、教育委員会に事前確認する
④ 事務費会員管理システム、通信費、振込手数料、備品更新、事務局人件費見落とされやすい費目。特に事務局人件費を無償前提にすると持続性を欠く

これらを合計し、会員数で割った額が会費の理論値です。

月会費 =(① 指導謝金 + ② 保険料 + ③ 施設費 + ④ 事務費 + ⑤ 予備費・積立)÷ 会員数

⑤の予備費・積立は、用具の更新や大会遠征、会員数が想定を下回った場合の緩衝材として、総額の5〜10%程度を見込んでおくと安全です。

相場観|「月1,000〜3,000円」の帯に収める

積算した理論値は、市場の相場観と突き合わせて検証する必要があります。先行自治体の実勢では、月額2,000円〜3,000円程度に設定されているケースが多く見られます。

一方、長野県佐久市教育委員会が令和6年に実施した保護者アンケートでは、許容できる月謝として中学生の保護者の約半数が「1,000〜3,000円程度まで」と回答しました。

国は令和8年度当初予算案の補足資料において、休日に週1日・月4日程度の活動を実施する場合、月額1,000円〜3,000円程度を参加費のイメージとして示しています。

つまり、実態と保護者の許容ラインと国のイメージが重なる「月2,000〜3,000円」が、現実的な着地点の目安となります。

積算値がこの帯を大きく超える場合は、会費を上げるのではなく、多種目展開による事務費の分散、会員数の目標見直し、補助金やクラウドファンディングによる公費・民間資金の上乗せで総額を圧縮するのが基本方針です。

なお、認定地域クラブの要件には「可能な限り低廉な参加費等の設定」が含まれています。営利目的の民間スクールと同水準の価格設定は認定審査で問題となり得るため、価格は認定要件との整合性を前提に検討してください。

減免措置は会費とセットで設計する

会費を決める際は、減免措置を後付けではなく同時に設計することが重要です。経済的な理由で活動を断念する子どもが出ない仕組みを整えることは、認定要件である「可能な限り低廉な参加費等の設定」の趣旨に沿うものであり、保護者・自治体からの信頼の基盤にもなります。

減免対象者が何人出ても収支が崩れないよう、減免分の原資をあらかじめ会費以外(補助金・寄附・協賛)から確保しておく設計が有効です。減免分を他の会員の会費に転嫁する構造は、持続性の面でも説明の面でも無理が生じます。

あわせて、申請ルートの設計も配慮すべき点です。学校経由での申請や運営団体による代行申請とすることで、対象となる家庭がクラブ側に事情を知られずに済む配慮ができます。

保護者への説明ロジック

これまで無償だった部活動に会費が発生することへの心理的抵抗は自然なものです。

会費の設定は、単なる価格決定ではなく、クラブの理念と運営体制を保護者に示す最初の接点です。積算根拠を持って説明できる状態を作ることが、長期的な信頼につながります。

保護者側から見た月謝の相場や、先行自治体の支援制度の全体像は以下の記事で解説しています。募集説明会の資料づくりの参考にもなります。

補助金・委託費・クラウドファンディングなど、会費以外の財源確保については以下をご覧ください。

4. 指導者の確保と安全管理

質の高い活動を維持するためには、指導者不足の解消と安全管理の徹底が欠かせません。指導者の確保ルートとしては、元教員や大学生、地域の競技団体、外部の民間業者などが挙げられます。

また、現代のスポーツ指導においては、ハラスメントを排除する「NO!スポハラ」の意識も重要です。ハラスメントを排除するには、指導者個人の意識改革だけでなく、組織としてのルール整備と研修体制の構築が求められます。

国の総合的なガイドライン(令和7年12月改訂)も、「肉体的・精神的な負荷を伴う厳しい指導」と「体罰や暴言等の決して許されない不適切行為」を明確に区別しており、組織的な体制整備の必要性と方向性は一致しています。

部活動改革は手探りで進む側面が大きいため、民間事業者として指導者とともに改善を重ねられる体制を整えることが、自治体・保護者からの信頼形成につながります。

5. 自治体マニュアルの確認

最後のステップは、部活動の地域展開(地域移行)に向けて各自治体が作成する運営マニュアルを確認し、学校側と連携することです。

マニュアルには、活動中の安全確保や、学校施設の利用調整に関するルールが明記されています。特に、平日の学校から活動場所への移動手段の確保などは、現場で頻発する課題の一つです。

実際の成功事例では、長野県南佐久郡のように6町村が自治体を越えて広域連携を行うケースが見られます。地域の特性に合わせた柔軟な運営体制を、自治体と共につくり上げていきましょう。

地域クラブの設立を成功させるためには、自治体側の実務フローも理解しておくことが重要です。自治体担当者向けの実務4ステップについては、こちらの記事をご覧ください。

SECTION 03赤字を出さない地域クラブ運営改善のポイント

部活動の地域展開(地域移行)にともなう地域クラブの立ち上げにおいて、民間事業者や運営者が最も懸念するのが赤字リスクです。

ボランティアによる支援は地域クラブの重要な基盤ですが、それだけに依存せず、安定した会費収入の仕組みを整えることが運営継続の鍵となります。ここでは、民間事業者のノウハウや公的な仕組みを活かした、具体的な運営改善のポイントを解説します。

多種目展開によるコスト分散

ひとつの団体で複数の競技種目を管理・運営する多種目展開は、運営コストを抑える有効な手段です。

種目ごとに別々の事務局を立ち上げるのではなく、法人の本部が一括して会計や各種調整等の事務局機能を担います。これにより、固定費や管理コストの削減・分散が期待できます。

ITツールの活用による事務の効率化

会員管理や月謝の徴収、日々の出欠確認などのバックオフィス業務は、ITツールを導入して徹底的に効率化しましょう。

実際の実証事業でも、以下のようなITツールの活用によって事務負担の軽減と効率化に成功しています。(製品名は事例で用いられた一例です)

  • オンラインツール(Google Classroomなど):指導者の活動記録管理や出席確認の情報を自動的に集約・集計する体制を整備(北海道伊達市の事例。静岡県焼津市でも同ツールの活用・研究が進められています)
  • 公式ホームページの活用:指導者手引きや登録申請書、けがの際の事故通知書などの各種様式をダウンロード可能にし、問い合わせ業務を大幅に削減(北海道伊達市の事例)

ガバメントクラウドファンディング(GCF)と民間資金の活用

保護者からの受益者負担(月謝)だけで全ての運営費を賄おうとすると、会費が高額になり子どもの体験格差を生む原因になりかねません。そのため、受益者負担や自治体の公的資金、企業からの民間資金を組み合わせた多角的な財源確保が求められます。

特に有効な財源確保策として実績を上げているのが、ふるさと納税の仕組みを利用して寄附を募るガバメントクラウドファンディング(GCF)です。

茨城県守谷市では、財政部局の助言を受けながら企画立案し、令和6年度(2年目)のクラウドファンディングでは目標500万円に対し10,094,500円(支援者439人、達成率202%)の寄附を達成しました。調達資金は、新たな種目の体験教室開催や、指導者の配置経費、各クラブへの救護バッグ設置などに有効活用されています。

また、地域の商工会や地元企業と連携し、企業スポンサー(寄附・協賛)を募る仕組みも効果的です。赤字を回避し、持続可能なクラブ経営を実現するための重要なポイントといえます。

SECTION 04【事例】部活動の地域展開(地域移行)に成功しているクラブ(自治体)の共通点

部活動の地域展開(地域移行)をスムーズに進め、安定した運営を続けている地域クラブには、いくつかの共通する特徴があります。スポーツ庁がまとめた最新の事例集から、特に注目すべき3つの自治体の取り組みと、その共通点を紹介します。

これらの事例は、自治体が主導した取り組みです。民間事業者や総合型地域スポーツクラブにとっての実務的な示唆は、「どの役割で参画できるか」という視点で読むと活きてきます。

広域連携の事例では複数自治体をまたいだ統括事務局の担い手、ハイブリッドモデルの事例では直営型・自主運営型それぞれの運営受託者として、民間が果たせる役割が具体的に見えてきます。

1. 自治体の枠組みを越えた広域連携

1つ目の共通点は、1つの市町村だけで抱え込まず、近隣の自治体と手を取り合う広域連携の仕組みを作っている点です。

長野県南佐久郡の事例

小規模な6町村が自治体の壁を越えて広域で連携しました。人口が少ない地域でも、広域でまとまることで子どもの人数を確保し、多様なスポーツの機会を維持することに成功しています。

2. 地域の特性に合わせたハイブリッドモデルの構築

2つ目は、既存のスポーツ団体や民間事業者を上手に組み合わせた柔軟な運営体制です。

茨城県神栖市の事例

市内すべての部活動種目を地域クラブ活動へ展開するにあたり、「直営型クラブ」と「自主運営型クラブ」を組み合わせたハイブリッドモデルを導入しました。地域の資源を最大限に活かし、受け皿となる組織の負担を分散させています。

3. 長期的な視点での地域一丸となった体制づくり

3つ目は、学校や家庭、地域住民が「子どものための改革である」という共通認識を持ち、長い時間をかけて対話を重ねてきた点です。

長崎県長与町の事例

「地域の子どもたちは、学校を含めた地域で育てる」という理念を掲げ、5年間という歳月をかけて丁寧に進めてきました。学校と地域クラブがしっかりと連携する土台を築き、地域全体で子どもたちを支える環境を実現しています。

これらの事例から分かる成功の共通点は、単に学校からクラブへ活動を移すだけではありません。「広域での協力」「柔軟な運営モデル」「地域ぐるみの合意形成」を丁寧に行っている点だといえます。

もっと詳細を知りたい方は、以下の成功自治体の事例記事もぜひ参考にしてください。

SECTION 05まとめ:地域と子どもたちの未来をつくる「新しい部活動」の形

少子化や教員の負担軽減といった課題に対し、部活動の地域展開(地域移行)を通じて、多様なスポーツ環境を守ることが重要です。

まず取るべき具体的なアクションは、地域の教育委員会への初回相談です。その際、以下の3点を事前に整理しておくと協議がスムーズに進みます。

  • 貴団体が対応できる種目と対象学年の範囲(受け皿としての具体的な規模感を示す)
  • 運営主体の法人格と安全管理体制の現状(認定要件を満たしているか、あるいは何が不足しているか)
  • 活動場所の見通し(学校施設の利用を希望するか、自前の施設があるか)

これらを整理した簡単な資料(A4・1〜2枚)を持参するだけで、担当者との対話が格段に具体化します。地域クラブの設立はゴールではなく、子どもたちの未来に向けたスタートです。

民間の専門性と機動力を活かして地域の子どもたちのスポーツ環境を支えることは、社会的意義と事業継続性を両立できる、この時代ならではの取り組みといえます。

SECTION 06参考資料URL

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