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部活動の地域展開における指導者確保の方法と報酬相場・研修制度

  • 自治体
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本記事では、文部科学省の最新ガイドラインや先進自治体の事例をもとに、現実的な指導者の確保ルートと報酬の目安を詳しく解説します。

【本記事における名称について】本記事では、文部科学省のガイドラインに基づく正式名称「地域展開」を基本として使用します。ただし、現場での認知度を考慮し、「地域展開(地域移行)」と旧称を併記します。

SECTION 01地域展開における重要な課題「指導者確保」

部活動の地域展開(地域移行)という、学校単位から地域全体で支える仕組みへの転換において、質の高い指導者の確保は自治体が直面する急務の課題といえます。

国のガイドラインでは、改革の主目的として生徒の豊かなスポーツ・文化芸術活動の機会保障を掲げています。

そのためには、適切な資質と能力を備えた指導者による良質な指導が不可欠です。まずは実務を進めるにあたり、混同されがちな部活動指導員と地域クラブ活動指導者の位置づけを正しく整理しておきましょう。

指導者確保には、必要な人数をそろえる「量の確保」と、生徒を安全に指導できる資質を担保する「質の保障」という2つの側面があります。

本記事でも、前半で人材バンクや兼職兼業など量を確保するルートを、後半で認定制度や研修を通じた質の保障を整理していきます。

SECTION 02部活動指導員と地域クラブ活動指導者の違い

自治体担当者が庁内や議会で説明する際、これら2つの制度的な違いを聞かれるケースは非常に多くあります。部活動指導員は「学校教育」の一環であり、地域クラブ活動指導者は「社会教育」として位置づけられている点が根本的な違いです。

以下の比較表を参考に、双方の役割や位置づけを確認してください。

項目部活動指導員(地域連携)地域クラブ活動指導者(部活動の地域展開)
位置づけ学校教育の一環(教育課程外)社会教育等(学校教育外)
主な役割日常の技術指導、大会引率、部活動の管理運営等地域の運営団体・実施主体の下での良質な指導等
配置・所属学校の設置者(教育委員会等)が任用地域のクラブ、スポーツ協会、民間事業者等
補償制度独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付各種民間保険等(スポーツ安全保険など)
部活動指導員と地域クラブ活動指導者の比較

このように、部活動指導員は学校内に配置される職員(地域連携)としての役割を担います。一方で、地域クラブ活動指導者が指導を行うのは、地域の運営団体のもとです。

なお、国のガイドラインでは、両者を兼務することも可能であると明記されています。指導を希望する教員や部活動指導員が、休日の地域クラブ活動指導者として活動に参画する形での人材確保も現実的な選択肢といえるでしょう。

SECTION 03指導者確保のための3つのルート

ルート1:都道府県が設置する広域人材バンクの活用

指導者の量を確保するうえで有効な手段の一つが、都道府県等の広域自治体が運用する人材バンクの活用です。

例えば、千葉県が創設した地域クラブ等指導者人材バンク「ちばクラサポ」では、20代から60代以上までの幅広い層から1,300名を超える多様な人材が登録されています。

このように、蓄積されたデータと連携することで、町村部などの人的リソースが不足している地域でも、効率的なマッチングが可能となります。

なお、人材バンクは「設置しただけでは登録者が集まらない」という点に、多くの自治体担当者が頭を悩ませているのではないでしょうか。

この点について千葉県では、まず分母となる登録者数を確保することを重視し、登録の条件を意図的に低く設定したという工夫が報告されています。

あわせて、指導者講習会の申込時や終了時といった人が集まる接点を活用して登録を直接呼びかけることで、着実に登録者を増やしていきました。

このように、制度を用意するだけでなく、登録のハードルを下げる工夫と、登録を働きかける具体的な接点づくりをセットで設計することが、人材バンクを実際に機能させるポイントといえます。

ルート2:希望する教師の兼職兼業の促進

国のガイドライン(令和7年12月)では、認定地域クラブ活動への従事を希望する教師の兼職兼業について、「学校運営に支障がない限り、積極的に許可を行うことが必要」と明記されています。

愛知県春日井市では、中学校の元校長を総括コーディネーターに任命し、市教育委員会と共同で指導を希望する指導者延べ約500名に任用面談を実施(スポーツ・文化活動含む)しました。

中学生の指導を行うに当たっての適性判断や、勤務条件・配置希望等を丁寧にヒアリングすることで、登録した約410名の指導者のうち、約290名が兼職兼業の教師となっています。

任用面談を通じて、地域展開(地域移行)の重要性や理念等を直接説明することで、学校部活動と地域移行の違いや地域移行への理解を深めることができたとの報告がされています。

教員の自発的な意思を尊重しつつ、適切な労務管理を行う仕組みづくりがポイントです。

地域展開(地域移行)で教員の関わり方がどう変わるのか、兼職兼業の制度面の詳細は以下の記事で解説しています。

ルート3:大学や民間事業者、競技団体との組織的連携

行政だけで指導者を網羅することは困難なため、外部の専門機関との連携体制の構築が不可欠です。

福岡県では「福岡県アスリート人材活用コンソーシアム」を設立し、大学やトップスポーツチーム、民間企業を集めた産官学連携によって指導者の養成と派遣を組織的に行っています。

大学の体育・スポーツ系学生のインターンシップや単位認定制度を組み合わせることで、若い世代の指導者を安定的に確保することが期待できます。

こうしたコンソーシアムを機能させるうえで注目したいのが、指導者を届ける形態の工夫です。

福岡県の取組では、指導者を各学校へ派遣する「指導者派遣型」だけでなく、複数の中学校の生徒が大学施設等に集まって指導を受ける「施設参集型」を組み合わせています。

後者は、生徒が一箇所に集まることで指導者を効率的に配置でき、大学が持つ施設や人材といったリソースも有効に活用できる点が特長です。

指導者の絶対数や移動手段の確保に悩む町村部などでは、指導者を一校ずつ回す方式だけにこだわる必要はありません。

拠点となる施設に生徒を集める施設参集型という選択肢もあわせて検討することで、限られた人材を無理なく活かせる体制を組みやすくなります。

連携先の確保だけでなく、「どのような形で指導を届けるか」まで設計に含めることが、持続可能な指導者確保のポイントといえます。

SECTION 04指導者報酬の相場と処遇の考え方

部活動の地域展開(地域移行)を持続可能な仕組みにするためには、指導者への適切な処遇が欠かせません。

自治体の担当者が特に頭を悩ませるのが、予算化の根拠となる報酬の相場観です。ここでは、スポーツ庁の実証事業事例集から読み取れるリアルな費用感と、指導者の質を担保するための処遇の工夫について詳しく解説します。

報酬相場の現実(事例から見る費用感)

全国の実証事業の事例を参照すると、指導者への謝金単価は「1時間あたり1,000円〜2,000円程度」で設定されているケースが多く見られます。

具体的には、以下のような報酬単価が設定されています。

  • 1,000円/時間:千葉県袖ケ浦市、静岡県焼津市、新潟県新潟市など
  • 1,500円/時間:新潟県上越市、岐阜県北方町、栃木県佐野市など
  • 1,600円/時間:北海道留萌市、愛知県春日井市、千葉県千葉市など
  • 2,000円/時間:茨城県守谷市、三重県志摩市など

なお、この金額はあくまで一例であり、地域の実情や指導者の専門性、民間事業者への委託状況などの条件によって報酬単価は変動する仕組みです。

また、実際に仕様書や予算書を作成する際は、時間単価としての謝金だけに目を向けると見積もりに漏れが生じやすい点に注意が必要です。

大会引率時に発生する旅費(指導者の交通費・宿泊費)や、生徒・指導者が加入するスポーツ安全保険の保険料についても、あわせて予算措置の対象として整理しておきましょう。

特に保険料は、自治体・運営団体・保護者のいずれが負担するのかという負担区分を早い段階で明確にしておくことで、後々の費用トラブルを防ぐことにつながります。

謝金・旅費・保険料をワンセットで捉えることが、現実的な予算化への第一歩といえます。

段階別報酬や資格取得支援の導入事例

単に報酬を支払うだけでなく、指導者のモチベーション向上や質の担保につなげる工夫も欠かせません。

一律の報酬設定ではなく、能力や経験を評価する仕組みを導入している自治体も見られます。

兵庫県播磨町では、所持する指導資格に応じて報酬単価を変動させる「段階別報酬制度」を導入しています。さらに、公認指導者資格を取得するための費用を自治体が支援する制度も特徴です。

具体的には、所持する資格に応じて4段階の報酬体系を設定しています。

区分対象資格報酬(1時間あたり)
国域等(A1)日本スポーツ協会(JSPO)等・中央競技団体の資格保有者(コーチ3以上)2,400円
国域等(A2)日本スポーツ協会(JSPO)等・中央競技団体の資格保有者(コーチ2以下)2,000円
県域等(B)都道府県競技団体の資格保有者、または教員免許保有者1,600円
町域等(C)地域での指導実績があり、教育委員会が認めた者1,200円
兵庫県播磨町の段階別報酬制度

資格取得支援についても、実務的なルールが整えられています。

公認指導者資格の受講料や登録料、テキスト代、交通費などを、1人あたり40,000円を上限として助成する一方で、資格取得後10年間は町内で地域指導者として指導にあたる旨の誓約書を運営団体に提出させています。

支援した人材が地域に定着し、継続的に指導を担う仕組みとすることで、投じた予算を一過性で終わらせない工夫といえます。

こうした支援制度は、指導者のスキルアップを後押しし、良質な指導を継続的に提供できる体制づくりに貢献するといえます。

SECTION 05質の高い指導者を確保するための認定制度と研修

部活動の地域展開(地域移行)において、指導者確保は量の確保と同じくらい質の保障が重要な課題といえます。

生徒の成長を支えるためには、中学生という発達段階への理解や、適切なスポーツ医・科学の知識を持った指導者が不可欠です。

国は、指導者の質を担保するための枠組みとして、「認定地域クラブ活動指導者」登録制度を推進しています。自治体は、この制度に基づいて必要な研修の機会を整備し、質の高い指導者を確保する体制を整えることが求められます。

認定地域クラブ活動指導者登録制度とは

この制度は、指導者による暴力・暴言・ハラスメント、虐待、いじめ、無視などの不適切行為の防止を徹底し、生徒が安全・安心に活動に取り組める環境をつくることを目的として創設されました。

市区町村等が定める研修を受講し、登録された指導者を「認定地域クラブ活動指導者」と呼びます。

この登録は、制度として独立しているわけではなく、地域クラブ活動の認定要件の一つ(適切な指導の実施体制の確保)と結びついています。

登録された指導者による指導が行われていることが、活動そのものの認定にもつながる仕組みです。登録される指導者は、以下の要件などを満たす必要があります。

  • 中学生年代を対象とし、学校部活動を継承・発展させた活動で指導することを理解したうえで、そのために必要な資質・能力を備えていること(市区町村等が定める研修を受講した者)
  • 暴力・暴言・ハラスメントなどの不適切行為を自ら行わず、また生徒同士の不適切行為も許さないことを誓約すること
  • 拘禁刑以上の刑や反社会的勢力との関係、過去の不適切行為・性犯罪歴などの欠格事由に該当しないこと

自治体には、これらの要件を満たす指導者を育成するため、研修の機会を整備することが求められます。

研修の内容としては、コンプライアンスや不適切行為の防止に加え、スポーツ医・科学に関する知識、中学生の発達段階に応じた科学的な指導法などが挙げられます。

対面形式だけでなく、オンラインやeラーニングを積極的に活用し、多様な人材が受講しやすい環境を整えることも効果的といえます。

また、登録した指導者に不適切行為があった場合には、運営団体・実施主体や市区町村等が事実確認を行い、注意や登録取消などの措置を講じることも制度に組み込まれています。

登録して終わりではなく、事後対応まで含めて生徒の安全を担保する仕組みです。自治体が主体となってこうした研修・対応の体制を整えることは、保護者が安心して生徒を送り出せる地域クラブ活動づくりにつながると考えられます。

要綱設計のポイント(有効期間と研修免除)

自治体が独自に登録要綱を制定する際には、いくつか押さえておきたい設計項目があります。

まず、登録の有効期間です。国の方針では、認定地域クラブ活動指導者の登録の有効期間は最長4年間と定められており、定期的な更新を前提とした仕組みづくりが求められます。

要綱には、有効期間の設定とあわせて、更新手続き(更新時の研修受講の要否など)を必須の項目として盛り込んでおくことが大切です。

次に、研修の免除規定です。すべての指導希望者に全メニューの受講を一律に義務付ける必要はありません。

国の方針では、教員免許を有する者や、スポーツ・文化芸術団体の公認指導者資格を保有する者などについては、保有する免許・資格の種類や活動歴などを考慮したうえで、研修の全部または一部を受講したものとみなす(免除する)ことができるとされています。

こうした免除規定を柔軟に設計しておくことで、既存の部活動指導員や外部指導者が過度な負担なく地域クラブ活動へ移行しやすくなります。

人材確保のハードルを下げる工夫として、要綱にあらかじめ免除の考え方を盛り込んでおくとよいでしょう。

SECTION 06まとめ:地域全体で指導者を支える体制を

指導者確保をはじめとする体制づくりは、いきなり制度設計から始めるのではなく、自治体の実態を正確につかむことから始まります。

国のガイドラインでは、生徒数や部活動数、部活動顧問の経験年数・指導希望、外部指導員の配置状況などを整理する「現状把握リスト」が示されているほか、生徒・保護者・教職員を対象としたアンケート調査によってニーズを把握することが推奨されています。

まずは、こうした現状把握リストを用いた自治体の実態調査と関係者へのニーズ調査から、具体的な一歩を踏み出すことが大切といえるでしょう。

自治体担当者向けの実務の進め方全体は、以下の記事で4ステップに整理しています。あわせてご覧ください。

SECTION 07参考資料URL

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