地域クラブの指導者になるには?資格・報酬・登録の流れ
- 指導者
本記事では、国のガイドラインが示す指導者の登録要件、未経験から関われる役割、自治体ごとの報酬の実例、登録までの流れを、国の資料と全国の自治体の事例をもとに整理します。
報酬は全国一律ではないため、紹介する金額は各自治体の実例として読んでください。
【本記事における名称について】本記事では、文部科学省のガイドラインに基づく正式名称「地域展開」を基本として使用します。ただし、現場での認知度を考慮し、「地域展開(地域移行)」と旧称を併記します。
SECTION 01地域クラブの指導者とは|部活動指導員との違い
休日の部活動を学校の外の地域クラブ活動へ移す取組は、これから全国で本格化します。
国のガイドラインでは、令和8年度から令和13年度までの6年間を「改革実行期間」とし、その期間内に原則すべての学校部活動で、休日の地域展開(地域移行)の実現を目指すとしています。
活動の場が学校の外に移れば、指導を担う人も地域から集めることになり、ガイドラインも、地域の多様な人材から質・量ともに十分な指導者を確保することが不可欠だとしています。
実際、指導者の不足を課題に挙げる自治体は多く、地域に暮らす人にも広く募集がかかります。
想定される人材の例には、競技団体やスポーツ少年団の指導者、アスリートに加えて、大学生、退職教職員、スポーツ推進委員、民間企業等の社員や自営業者、教員免許所有者などが並んでおり、指導歴の長い人だけに向けた役割ではありません。
よく似た名前の「部活動指導員」は、学校部活動の中に配置される人材で、ガイドラインの分類では、学校部活動に部活動指導員を置く取組を「地域連携」と呼んでいます。
これに対して地域クラブの指導者は、学校部活動を地域クラブ活動へ移す「地域展開(地域移行)」の側に立ち、学校の外で行われる地域クラブ活動で生徒を指導する立場です。
SECTION 02必要な資格と登録制度の要件
国のガイドラインが示す登録要件に、日本スポーツ協会などの公認指導者資格を持っていることは含まれていません。
ガイドラインで示されているのは「認定地域クラブ活動指導者」登録制度で、市区町村等が定める研修を受講し、市区町村等に登録された指導者を「認定地域クラブ活動指導者」と呼んでいます。
登録の要件として示されているのは次の三つで、すべてを満たす人が市区町村等に登録されます。
- 1. 市区町村等が定める研修を受講し、中学生年代を対象とした地域クラブ活動で指導することを理解していること
- 2. 暴力・暴言・ハラスメント、虐待、いじめ、無視等を自ら行わず、参加する生徒同士のこうした行為も許さないと誓約していること
- 3. 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたは執行を受けることがなくなるまでの人、反社会的勢力等である人やこれらと社会的に非難されるべき関係のある人、過去に暴力・暴言・ハラスメント等の行為や性犯罪歴等がある人のいずれにも当たらないこと
登録の有効期間は最長4年で、具体的な期間は地域の実情に応じて市区町村等が設定します。
研修で学ぶ五つの項目
研修で学ぶ内容は申し込む先の市区町村等が定めますが、ガイドラインが示す指導者に求められる資質・能力と研修メニューの例は、次の五つの項目に整理されます。
| 項目 | 研修メニューの例 |
|---|---|
| 総論・制度 | 部活動の地域展開(地域移行)の理念や地域クラブ活動の在り方 |
| 基本姿勢・服務規律 | 暴力・暴言・ハラスメント等の不適切行為の防止、生徒や保護者等の信頼を損なう行為の禁止 |
| 生徒への指導 | 中学校段階の生徒の特徴や配慮事項、発達段階に応じた科学的な指導、女子生徒の健康課題や障害のある生徒への配慮 |
| 安全管理・事故対応等 | 施設や用具の点検などの事故防止、事故が起きたときの応急手当や関係機関への連絡 |
| 保護者や学校との連携 | 保護者との連絡調整、生徒が在籍する中学校との連携 |
競技の技術そのものよりも、中学生を安全に、人格を尊重しながら指導するための基本に重きを置いた内容です。
研修は対面だけでなくオンライン方式も積極的に活用し、年1回など一定期間ごとに行う形が例示されています。
実施するのは市区町村等に限らず、都道府県や地域クラブ活動の運営団体・実施主体、市区町村等が認めたスポーツ・文化芸術団体や大学等の場合もあります。
教員免許や公認資格がある場合
教員免許を持つ人や、スポーツ・文化芸術団体の公認指導者資格を持つ人は、研修メニューの全部または一部を受講したとみなすことが考えられるとされています。
免除の範囲は、持っている免許・資格の種類や活動歴などを考慮して決める形が示されているので、実際にどこまで受講済みとして扱われるかは、申請先の市区町村等に確認が必要です。
SECTION 03未経験から始める|補助や見守りという関わり方
地域クラブ活動を支える役割は、技術を教える指導者だけではありません。
ガイドラインでは、指導や指導補助、見守り等を行う人材をまとめて「指導人材」と呼んでいます。
指導補助や見守りで活動をサポートする人材の募集や、経験豊富な指導者とペアで指導するOJTも、ガイドラインが挙げる取組の例に並んでおり、いきなり一人で教える形だけではありません。
例えば、熊本県和水町では、指導者が1人しかいない地域クラブ活動に、参加する生徒の保護者が「見守りスタッフ」として加わっています。
令和6年度は陸上競技・バドミントン・水泳の三つの地域クラブ活動を、5人の地域指導者と約30人の見守りスタッフが支えました。
受け持つのは安全管理や怪我の対応、生徒の出欠確認や連絡の受付で、競技の指導ができなくても引き受けられる役割です。
見守りや補助の立場であっても、不適切な行為をしないという誓約は指導人材全体が対象で、役割に応じた研修の実施も例示されているため、応募の際はどの手続きが必要かをあわせて確かめておきます。
茨城県神栖市の指導者も、これから指導者になろうとする人に向けて「特に『教えることに自信がない』と感じている人でも、最初は補助的な立場からスタートすることができ、経験を積みながらステップアップが可能です」と語っています。
SECTION 04報酬(時給)の目安|自治体ごとの実例
地域クラブの指導者の報酬は全国一律ではなく、自治体や運営団体によって異なり、同じ自治体の中でも資格によって単価を変えている例があります。
資格で報酬が変わる例|兵庫県播磨町
兵庫県播磨町には、所持する指導者資格に応じて時間単価を四段階に分ける「段階別報酬制度」があります。
| 区分 | 対象 | 報酬 |
|---|---|---|
| 国域等(A1) | 日本スポーツ協会(JSPO)およびそれと同等の中央競技団体等の資格を持つ人(コーチ3以上) | 2,400円/時間 |
| 国域等(A2) | 同じ資格を持つ人(コーチ2以下) | 2,000円/時間 |
| 県域等(B) | 都道府県競技団体の資格を持つ人、教員免許を持つ人 | 1,600円/時間 |
| 町域等(C) | 地域での指導実績があり、教育委員会が認めた人 | 1,200円/時間 |
あわせて、公認指導者資格を取るための受講料や登録料、テキスト代、交通費などを、1人あたり40,000円を上限に支援しています。
この支援を申請するには、資格取得後10年にわたり町内で地域指導者として指導する旨の誓約書を提出することが条件です。
資格は登録の要件ではありませんが、取得すると報酬が上がる仕組みを持つ自治体もあるということです。
有償と無償の役割を分けた例|茨城県土浦市
報酬を受け取る関わり方だけでなく、無償のボランティアとして関わる区分を設けている自治体もあります。
茨城県土浦市の人材バンクには「指導員(有償)」「ボランティア指導員(有償)」「ボランティアスタッフ(無償)」の三つの区分があり、報酬を受け取らない形でも登録できます。
募集を見るときは、指導・補助・見守りのどの役割か、有償か無償かをあわせて確かめておくと、自分に合った関わり方を選びやすくなります。
SECTION 05指導者になるまでの流れ|申請から登録まで
ガイドラインが示す、認定地域クラブ活動の指導者として登録するまでの手続きは次のとおりです。
- 1. 申請:登録を希望する人が、市区町村等に登録申請書と誓約書を提出する
- 2. 確認:市区町村等が申請書の内容を確認する
- 3. 受講案内:要件を満たしていれば、市区町村等から研修の案内を受ける
- 4. 研修受講:市区町村等や都道府県、運営団体などが行う研修を受ける
- 5. 受講報告・受講確認:研修を受けたことを市区町村等が確認する
- 6. 登録・通知:認定地域クラブ活動指導者として登録され、通知を受ける
すでに所属する運営団体・実施主体が決まっている場合は、運営団体などを通じて申請書を出したり、研修の案内を受けたりする方法も示されています。
申請の窓口は市区町村等で、研修の内容も市区町村等が定めるため、まずは住んでいる地域や教えたい地域の市区町村の募集を確かめることが出発点になります。
ガイドラインでは都道府県等による人材バンクの設置・運用も取組の例に挙げられているので、市区町村の募集とあわせて、都道府県の人材バンクの有無も調べておくと探せる範囲が広がります。
人材バンクに登録する|千葉県の例
千葉県が設置・運営する「ちばクラサポ」は、地域クラブ活動などの指導者を登録する県の人材バンクです。
県民等がスキルや資格の情報を登録すると自治体や運営団体から検索してもらえるだけでなく、自治体や運営団体が指導者を募集している地域クラブ活動を登録者の側から探すこともできる双方向の仕組みになっています。
登録の条件は低く設定されており、資格証や修了証を持っている人はその情報を添付できます。
令和7年度からは、eラーニングによる研修も受けられるようになりました。
大学を通じて研修と派遣を受ける|福岡県の例
大学や企業を通じて指導者になる道もあり、福岡県では「福岡県アスリート人材活用コンソーシアム」が、福岡大学の一般社団法人FUスポーツコミュニティを事務局として、大学生や企業に所属するアスリートを指導者として育て、地域へ派遣しています。
研修は、指導者としての心構えやハラスメント、怪我の防止と初期対応、AEDの使い方を扱う各30〜45分の集合型研修と、4領域100ユニット(1ユニット5分)のオンライン研修を組み合わせた構成です。
参加した大学生は「この事業をきっかけに自治体と契約して、地域指導者となりました」と振り返っており、研修と派遣がその後の地域指導者としての活動につながった例です。
現職の教員は兼職兼業の許可を取る
公立学校の教員が地域クラブ活動で指導する場合は、兼職兼業の許可を得る必要があります。
ガイドラインは教育委員会等に対し、認定地域クラブ活動については、学校運営に支障がない限り積極的に許可を行うよう求めています。
同時に、許可の際は本人の意思を尊重し、指導を望まない教員が参加を強いられないよう十分に確認することも明記されました。
例えば、茨城県神栖市では兼職兼業の取扱いを明確にして全校に文書で周知し、現在は同市が「直営型」とする地域クラブ活動の指導者の約半数を、許可を得た教員が占めています。
手続きの窓口や書類は教育委員会ごとに異なるので、希望する場合は勤務先の学校や教育委員会に早めに相談しておきます。
SECTION 06まとめ|応募の前に確かめたい三つのこと
国の登録制度で求められるのは研修の受講と誓約が中心で、公認資格は要件に含まれておらず、補助や見守りから関わる道もあります。
応募を考えるときは、次の三点を確かめてください。
- 1. 資格:教員免許や公認資格がある場合に、研修の一部を受講済みとして扱ってもらえるか
- 2. 役割と報酬:指導・補助・見守りのどの役割か、有償か無償か、単価はいくらか
- 3. 窓口:住んでいる地域の市区町村の募集と都道府県の人材バンク、教員の場合は兼職兼業の手続き
報酬も研修の中身も自治体ごとに違うので、まずは気になる地域の募集要項を一つ開き、役割と条件を見比べるところから始めるのが近道です。
SECTION 07参考資料URL
- 部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月)※別冊資料1「地域クラブ活動に関する認定制度(指導者登録制度を含む。)」を含む
- 部活動の地域展開における地域クラブ活動の創設・運営ガイドブック(令和8年3月)
- スポーツ庁「令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業事例集」(令和7年8月公表)
本記事の情報基準日:2026年9月28日
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